高橋源一郎『一億三千万人のための小説教室』

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高橋源一郎による小説の書き方・読み方講座という時点で、読みたくなる人も多いと思います。知り合いに高橋源一郎についての所見を聞くと、最近の政治色の強さが苦手、という人がチラホラいますが、これは2002年の本なのでまだ大丈夫ですよ。

まあそんなにスペシャルなことが書いてある訳でもないのですが、①高橋源一郎の文章はやはり巧い②実例が多く面白く幅広い(武者小路実篤ケストナーから、清少納言や『セックス障害者たち』まで; 小説から詩から新書や思想書まで)という2つの理由により、グイグイ読ませる1冊になっています。

個人的には、特に「レッスン6 あかんぼうみたいにまねること、からはじめる、…」という章が好きです。章全体の内容としては、良い小説の真似ることで書き方を学ぼう、というありがちな話なのですが、村上春樹羊をめぐる冒険』がいかにチャンドラー『長いお別れ』をオマージュしているか、高橋源一郎ゴーストバスターズ』がいかに太宰治「駆け込み訴え」の冒頭と「女生徒」を真似して書かれたか、という実例が面白い。そして納得させられます。